自由研究は「わりとどうにかなる」ところですが、頭を悩ませる子が多いのは「読書感想文」だったりします。
当サイトをごらんのあなたは、親御さんか、もしくは書く本人かもしれません。
「主人公の気持ちになる」とは耳にタコができるほど聞いていますよね。しかし、それだけでスラスラ書けるなら悩みません。
「自分に置き換える」 「脇役(わきやく)の目線で見てみる」 それも大事ですし有効ではありますが、自分の頭だけでは、原稿用紙の枚数を埋めるのは大変なのです。
そこで、例をだしながら、技をお教えします。
家族にも読んでもらうことです。そして感想を聞きましょう。誰でも主人公の気持ちをまず考えますから、2番目に心に残った部分を聞くことです。
家族の協力があれば、目線を変えることなんて楽勝なんですよ。たとえば 有名な作品、太宰治の「走れメロス」を例にしてみます。
ご存じない方のために簡単にあらすじをお教えします。
決して長いお話ではないのですが、このようなストーリーです。
まずメロスの気持ちになると色々思います。王に意見をしにいくほどの正義感や、友人のために走り続けられるかということ。それだけではなかなか書き進みませんよね。
お母さんの意見を聞いてみましょう。
「なぜ王は妻をころしてしまったの。ひどい。けれどなぜ妻は、王の心をかえられなかったの?」
王家だったので望まぬ結婚相手だったのかもしれません。でも本当は一番理解して説得できる立場だったんじゃないか?お母さんはきっとこう思うでしょう。
お父さんの意見を聞いてみましょう。
「走り続けて、喉(のど)が乾き水を飲み、もう走らなくて良いかなと思ってしまう気持ちがよくわかる」
働いているお父さんは、きっとこの気持ちが理解できるでしょう。しかし走らなくてはいけない、とまた走り出すのです。
お姉さんの意見をきいてみましょう。
「たった1人の身内である兄が、自分の結婚式のために戻ってきてくれたことは嬉しい。でも事情を知ったら、殺されるかもしれない兄を止めるかどうかすると思う。」
細かく描写(びょうしゃ)されていませんが、メロスは旅立つことを妹に言っていません。ただ街から大急ぎで戻ってきて、結婚式を早めようと言います。何かあったのかと、妹は思うでしょう。
お兄さんの意見をきいてみましょう。
「なんで親友を人質に出すわけ? なんでセリヌンティウスもOKして3日間も待てるわけ?」
物語の中心部分ですね。残虐(ざんぎゃく)な王の元に3日も残されるんです。ぎりぎりまで、処刑台にのせられても、セリヌンティウスは「あいつは来る!」と叫び続けます。メロスは彼が自分を信じてくれると思っていて、彼もメロスを心から信じていたのです。
書く立場のあなたには、そんな友人はいますか?このお話では「真実」ではなく「信実」と書かれているのもポイントです。(お兄さんによっては最後のオチが気になるかもしれませんが。)
読む人の立場や性別で、目が行く場所が違うことがわかりますか?
家族全員に読んでもらうのが良いのですが、無理なら誰か1人でもいいです。別の部分に目がいった理由や意味をかんがえてみましょう。
「読んでみて。どう書けばいいか教えて」ではダメですよ。
「どう思った? どこが気になった?」と意見を聞くんです。その意見をくれた人と話し合ってみましょう。話しあいながらメモをとることを忘れないでくださいね。
「お母さんはこう言っていました」と書いて良いのです。それに対して、自分はどう思ったのか。理解できるかできないか。妻の気持ちは、書くあなたにはわからないかもしれません。いつか結婚したらどんな夫になりたいかどんな妻になりたいか、想像するんです。
お父さんは今日も仕事にいきます。1杯のビールを飲みながら、疲れたなもう嫌だなと思っているかもしれません。それでも、メロスよりも長い長い日数を家族のために走ってくれています。
「物語の感想」ではなく「物語の感想の感想」でいいわけです。
親御さんでしたら、協力してあげてください。もちろん、感想の感想を書いて良いこと、話し合ったことを書いて良いと教えましょう。そして話し合ってください。
小中学生向けに選ばれた本は、今の大人になったあなたにとって、どんな気持ちにさせてくれますか?
目線を変えるということは、簡単なようで難しいのは大人でもわかりますよね。子どもに丸投げしないで手伝ってあげましょう。これを乗り越えて繰り返していくことで、きっとお子さんにも読解力がつきますよ。
本を自分に選ばせる学校も多いですが、やはり「読書感想文推薦(すいせん)図書」はオススメです。推薦されるだけの理由と深さがあります。本選びに迷っているようなら、難しそうでもきちんとした本が良いですよ。
他の人の目線が入るだけで、スラスラとまではいかなくても、枚数は書けるでしょう。「目線を変えてみる」は単純なこと。自分じゃない目でみてもらえば良いんです。1人で書くから、大変なんです。
学校でも目線を変える方法は教えてくれますが、クラスメイトで意見を出し合っていますよね。家で1人では話し合えません。本当に目が違えば全然とらえかたが違うんですよ。本は面白いものです。
ぜひ、このページを、お母さんお父さんや、お子さんに見せて、宿題を一緒にチャレンジしてみてくださいね^^